「人生を変えたい!」ときの論理療法入門

みなさん、こんにちは。

心理カウンセリング空の関口剛史です。

心理カウンセリングでは「人生を変えたい」というテーマになることがあります。

きっと「人生を変えたい」と誰もが一度は思うのではないでしょうか。

「人生を変えたい」と思うときは、大きな挫折や悩みにぶつかってしまい、もう自分ではどうすることができない問題に直面したときです。

苦しいときほど「人生が変われば、きっとうまくいく!」と思えるものです。

では「人生を変える」ためにはどうすればいいでしょうか?

それは「出来事に対する考え方を変える」ことです。

もし、あなたが「苦手」と感じることや「恐い」と感じることが、考え方を変えて「好きな」ことや「楽しい」ことに感じられるようになれば、人生も変わりますよね。

出来事に対する考えかたひとつで、良くも悪もなるものです。

今日は、今までの考え方を変えていく「論理療法」について、アルバートエリス著『性格は変えられない、それでも人生は変えられる』を引用しながら解説をしていきます。

目次
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性格は変えられない

論理療法の解説の前に、まず性格について書きます。

人間関係がうまくいかないとき、問題の原因は「自分の性格」にあると考えてしまう人が非常に多いです。

例えば、おとなしい性格の人が、人間関係でうまくいかないとき「おとなしい性格のせい」と考えてしまい、無理して「明るい性格」に変えようとしてしまいます。

「性格」というのは、強い遺伝的な傾向を含みます。例えば内向性や外向性のように。非常に努力すれば、ある程度このような傾向も変えることはできます。

でも、完全には変えられません。ですから、自分の基本的な「性格」については、むしろそれを受け入れていくとよいのです。

残念ながら性格は変えられません。

それでも、無理して性格を変えようとすると最後は自己嫌悪に陥ってしまいます。

なぜならば、「性格を変えたい」という思いは、強力な自己否定からはじまっているからです。

自己否定をして性格を変えても、それは根が育っていない木のようなもので、ちょっとしたことで直ぐに倒れてしまいます。

あなたが抱えている悩みや問題に、あなたの性格は一切関係ありません

。あなたの性格は「あなたらしさ」のひとつなので、どうか否定をしないでください。

そして、人生を変えたいと思うのであれば、まずは性格を受け入れるところからはじめてみましょう。

論理療法とは

論理療法はアメリカの臨床心理学者「アルバートエリス」が考案をした心理療法です。

論理療法の基本は、人は日常生活で困難なことにぶつかった時、生まれながらにその問題をうまく解決できる力をもっている、という考え方です。

一般的な心理療法では、脳内物質や心に問題があると捉え、その問題を解消することが目的になっています。

しかし、論理療法では、問題をうまく解決できる力(考える力)を育てていくことが目的となります。

論理療法には、以下4つの効果があります。

・心の奥深くで、思考の変化を起こしていく。
・今、目に見えている症状をよくしていく。
・他の情緒的な問題を解決していく。
・かつての悩みや不安はめったによみがえらず、起こった場合にも、論理療法の手法を効果的に使えるようにしていく。

うつ病もそうですが、うつ病により落ち込んだ心を回復させることと、うつ病になってしまう原因を解決することは、まったく別のアプローチです。

落ち込んだ心を回復させるには、一般的な心理療法や抗うつ薬が有効になり、うつ病になってしまう原因を解決するには、論理療法が有効になります。

間違った思い込みを見つける

私たちが抱える悩みとは、心の中の望み(理想)と現実のギャップです。

例えば、「人から嫌われてはならぬ」という望みがあると「嫌い・苦手な人」との人間関係に悩むことになります。

人は、成功し、他の人から親切にされ、暮らしやすい環境に恵まれることを強く望みます。望むことは自由です。

しかし、こうでなければいけないと思い込む「ねばならぬ主義」には、要注意です。

こうした自分への命令が、幻滅やいらだち、そして「恐れ」を招くことになるのです。

なぜ「人から嫌われてはならぬ」と考えてしまうのでしょうか。

1人ひとり性格が異なる人間関係のなかで「人から嫌われてはならぬ」という考えは、もしかしたら、とても非合理的な考えではないでしょうか。

心が不安定なのはどういう時でしょう? 自分に反して行動している時です。

自分の健全な「好み」を、不健全で、非合理的な要求や義務に変えてしまっている時です。

自分が「嫌い・苦手」と感じている人なのに「人から嫌われてはならない」という非合理的な考えがあると、心は「どうしていいかわからなくなり」不安定になってしまいます。

では、どうして「人から嫌われてはならない」という非合理的な考え方をしてしまうのでしょうか。

それは、私たちには「思い込み」があるからです。

自分の非合理的な考えを見つけ出す簡単な法則があります。まず、あなたの思い込みを見つけ出すことです。

人間は「思い込み」の生きものです。

例えば、下記の絵を最初に「老婆」と見れば「これは老婆である」と思い込み、最初に「若い女性」と見れば「これは若い女性である」と思い込みます。

老婆のパラダイムシフト

人間は「自分の思い込んだとおり」に世界を見ています。

なので、自分の思い込みが間違っていれば、世界も間違って見えてしまいます。

自分の間違った思い込みを見つけ出すのが論理療法のABC理論です。

ABC理論で思い込みを理解する

ABC理論では、人間の思考や感情を下記のとおりに別けて考えます。

  • 出来事・事実(Adversity)
  • 信念・思い込み(Beliefs)
  • その結果(Consequences)

例えば、先の例で「人から嫌われてはならぬ」と思い込み(B)を持っている人の前に事実(A)「苦手の人」が現れると、結果(C)は「無理してその人に好かれよう」としてしまいます。

しかし、自分が苦手と感じる人なのに、無理に好かれようとする結果(C)は疲れるものですね。

では、思い込みを「人から嫌われてもOK」に変えるとどうでしょうか?

「苦手な人」が現れたという事実(A)に対して、自分は「無理に付き合う必用がない」という結果(C)を得ることができます。

もう1歩踏み込んで考えると、思い込みが「人から嫌われてもOK」に変わると、「苦手」意識が外れ、事実(A)は「人が現れた」というシンプルなものになり、気にもならなくなります。

あなたは自分の感情や行動を選ぶことができます。

あなたの大事な目標が逆境によって阻まれた時、あなたは健全な感情を抱くか、不健全な感情を抱くか選択できます。

それだけでなく、前向きな行動をとるか、自滅的な行動をとるかも自分で選択できます。

あなたの望みや目標が不運なA によって阻害された後、C においてどのように反応するかは、あなた自身の選択にかかっています。

人間は、自分にとって望みどおりでない結果(C)に遭遇すると、その結果をつくった事実(A)を変えようとしてしまいます。

例えば、「人から嫌われてはならぬ」という望み(B)を持った人の前に「嫌いな人」が現れる(A)と、その人は苦しさ(C)を感じます。

そのとき、その苦しさの原因は「嫌いな人」(A)にあると考えると、「嫌いな人」と戦おうとするか、

「嫌いな人」から逃げ出すかのどちらの選択をします。

しかし、本当の原因は、事実「人がいる」(A)にあるのではなく、「人から嫌われてはならぬ」とういう思い込み(B)にあります。

よって、論理療法では、自分にとって望みどおりでない結果(C)に遭遇したときにほど、事実(A)ではなく自分の思い込み(B)を理解し意識的に変えていきます。

合理的な反論と新しい考えを取り入れる

では、自分の思い込み(B)を理解し意識的に変えていくにはどうすればいいのでしょうか?

それはD (Disputing)反論することによってできます。

自分の破滅的なB (間違った思い込み)を認め、それが健全で合理的考えになるまで、反論するのです。

自分の思い込み(B)に自分で反論することにより、今までの間違った思い込みが明確になってきます。

反論Dは、今までの自分自身との押し問答になります。

反論の際は以下の3つのポイントを意識しながら、反論意見を紙に書き出していきます。

【反論時の3つのポイント】

  • 現実的であること
  • 合理的であること
  • 実利的であること

ある程度、反論意見を書きだしたら、反論意見を見ながらE(Effective)の新しい考えや行動指針を紙に書きだしていきます。

新しい行動指針を書き出す際は、以下の点を意識します。

  • 今までとは違う考え方をする
  • 今までとは違う感じ方をする
  • 今までとは違う行動をする

行動により思い込みは(B)は上書きされる

ABCに対する反論(D)を行い、新しい考えと行動指針(E)が書き出せたら、今までの思い込み(B)を上書きするため、新しい行動を意識的に起こす必要があります。

しかし、実際には新しい行動がなかなか起こせません。

なぜならば、今までの思い込み(B)を上書きしていくことに、人は恐怖を感じてしまうからです。

もし自分の思考・感情・行動を改善したいと思ったら、たとえ不快であっても、強制的に通常の行動とは違った行動をしなければいけないとしています。

このことは、自滅的な習慣に対抗する行動をとることによって、新しいよりよい行動習慣を獲得し、困難ではあっても確実に自分を変えることができるということです。

人間の思い込みは、過去の経験によりつくられています。

例えば、子供の頃にコーヒーを飲んだとき、「おいしい」と感じられれば「コーヒーはおいしいもの」と思い込み、逆に「苦い」と感じれば「コーヒーは苦いもの」と思い込みます。

そして、子供の頃の「コーヒーは苦いもの」という思い込みを、大人になってから「おいしいもの」に上書きするには再びコーヒーを飲むという行動が求められます。

経験を伴う行動を起こすことでしか、間違った思い込みを上書きすることはできません。

 

行動を積み上げるための意志力

人間は、よくもわるくも今の自分を保とうとします。

よって、何か新しい変化を起こせば、必ず元の自分に戻ろうとする反作用も一緒に働きます。

その反作用に負けないために「間違った思い込みを変えていく」という意志力のもとで、行動を積み上げていく必用があります。

意志力とは、単なる意志、選択や決定ではありません。

その力とは、何かをしようとする決意、その方法に関する知識、自分を強制する実行力、たとえそれが困難であっても継続すること、そして以前の弱い自分に逆戻りしてしまっても、何度もこのプロセスを繰り返すことのできる力のトータルです。

論理療法は、ただ受けるだけの受動的な心理療法ではなく、自らを変えていくための行動を積み上げていく能動的な心理療法です。

論理療法の最後に「エリック・バーン」の言葉をご紹介します。

過去と他人は変えられない。しかし、いまここから始まる未来と自分は変えられる。
エリック・バーン

他人(事実A)と過去(結果C)は変えることはできません。

私たちに変えることができるのは間違った思い込み(B)のみです。

思い込み(B)が変われば、これからの結果(C)の感じ方が変わっていきます。

そして、感じ方が変われば、自然と人生も変わっていきます。

「人生を変えたい」と思う時は、まずは、自分の間違った思い込みの発見からはじめていましょう。

まとめ

最近、本屋でアンガーマネジメント(怒りのコントロール)などの「感情をコントロールする本」を数冊見かけました。

それだけ「感情をコントロールしたい」と思う人が多いのかもしれません。

私は論理療法を実践するようになってから、感情は「出来事(A)によって与えられているもの」ではなく「自らの思い込みや信念(B)によって作り出されている」ことに気づきました。

感じる情報と書いて感情です。

よって、感情は「怒り」として人にぶつけるのではなく、無理して抑えるのでもなく、自分自身の間違った思い込みに気づき変えていく情報として活用することを私はオススメしています。

心理カウンセリング空では「論理療法」を取入れた実践的なカウンセリングを行なっております。

「思い込み」が変われば「悩み」も変わります。

まずは、心理カウンセリングでご自身の「思い込み」に気づいてみませんか?

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