みなさん、こんにちは。
心理カウンセリング空の関口です。
新しい年度がはじまりましたね。学校では入学式が行われ、会社では今年度の目標を設定するなど、4月は節目の時期です。
年の節目は、今までの生活習慣の改善するために、心機一転新しい習慣を取入れたいと思うもの。
そして、4月から「よし、毎朝マラソンしよう!」と考え、毎朝のマラソンを習慣化しようとするのですが、GW連休明けには習慣化に挫折して、また元どおりに。
4月に心機一転新しい習慣を取入れようとしても、毎年やる気を失い挫折してしまう。みなさんは、そんな経験をしたことありませんか?
「新しい習慣を取入れよう」と、頭で考えることは簡単なのですが、実際に日常に習慣を取入れ、習慣化させていくのは難しい作業になります。
なぜならば、心は新しい習慣を取り入れることに「抵抗」するからです。多くの人が習慣化に挫折してしまうのは、やる気を失ったからではなく、心の「抵抗」が勝ってしまったからです。
では、新しい習慣を取り入れるためには、どうしたらいいのでしょうか?
今日は新年度に向けて、習慣化に挫折してしまう理由と、新しい習慣を取り入れる7ステップについてご紹介します。
習慣とは
まず、「習慣」を語る前に、習慣の意味を定義しましょう。「習慣」の意味を辞書で調べると、以下のように書かれています。
習慣とは
心理学で、学習によって後天的に獲得され反復によって固定化されたもの
~引用 大辞泉~
みなさんは、今の生活のなかで既に習慣化されていることはどんなことでしょうか?
歯を磨くこと・自転車に乗ること・近くの駅まで歩いていくことなど、毎日の生活の中で何も考えずにストレスを感じることもなく繰り返して行えていることが、既に習慣化されたものです。
よって、習慣とは「何も考えずに繰り返しできること」、習慣化とは「新しい習慣を日々行える状態を作り出すこと」です。
新しい習慣化を取入れ生活習慣の改善
新しい年度に「新しい習慣を取入れたい」と考えるとき、多くの人は今までの生活習慣を改善したいと思うときではないでしょうか?
「去年の健康診断の結果があまりよくなかった」、「喫煙は体に悪いとわかっていても、なかなか禁煙ができない」など、今までの生活習慣を改善して『健康』になりたいと思う時、人は新しい習慣を取入れようとします。
この記事では、体重100Kg人が体重80Kgを目標に、新しい習慣化を取入れるシチュエーションで、習慣化の解説をしていきます。
習慣化に失敗する原因
まず、新しい習慣に挫折してしまう理由について書きます。
仮にみなさんの体重が4月に100Kgだとします。
その体重を夏までに80 Kgに落とすことを目標に生活習慣を改善したい場合、どんな新しい習慣化が必要だと思いますか?
- 食事制限をする
- 断食をする
- 毎朝ランニングをする
- スポーツジムに通う
などが思いつくと思います。
でも、残念ながら、上記のような新しい習慣化は以下2つの理由で挫折します。
三日坊主になる
新しい習慣をはじめるとき、8月に向けて-20Kgの減量させ、引き締まった体で夏をエンジョイするぞ!と目標を設定。
目標の達成に向けて最初の一日は「よし頑張るぞ!」とやる気満々の行動ができるものです。
しかし、3日目あたりから「面倒くさいな・・・」・「今日はまあいいか・・・」とやる気が段々となくなっていく。
7日目になると、「無理して頑張ることもないか」・「我慢するストレスの方が体に悪い」など、できない理由を正当化して習慣化に挫折。
最後は、「いままでの自分のままでいいや・・・」と元の自分に戻ってしまいます。
リバウンドする(元に戻る)
毎日の食事制限や毎朝マラソンを習慣化し、5月に-5Kgダイエットに成功!このままいけば8月には-20Kgの減量も夢ではない!と喜び気を緩めたあと、ダイエット後のリバウンドにより、6月は元の体重に戻り、8月には110Kgに・・・当初の目標よりもマイナスの結果になってしまうことがよくあります。
目標達成に向けて、「10日で5Kg痩せる」という急激なダイエットや「毎朝5Km走る」など、いまの自分にとって、ストレスが大きい習慣を取り入れれば取り入れるほど、その後リバウンドする確率が高くなります。
新しい生活習慣を取入れようと、初日は頑張れるのだけれど、三日目あたりから「やる気」が失せてしまう。
ダイエットに成功したのにリバウドで元に戻ってしまう。
こいうときは「私にはやっぱり無理なんだ・・・」と自己否定をして諦めてしまいます。
でも、「やる気」が失せてしまうのもリバウドで元に戻ってしまうのも、私の問題ではなく心の「抵抗」によるものです。
新しい習慣を取入れたいと思うのであれば、まずは心の「抵抗」を理解することから、はじめましょう。
心の中にある2つの抵抗
新しい習慣を取入れたいと思うとき、それは今までの生活習慣を改善し、自分に新たな変化をかけていこうとするときです。
人間は、理想の実現に向けて思考で「変わりたい!」と意識的に考えます。
しかし、心は無意識で「変わりたくない」と思っています。
「変わりたい」と願う意識的な思考と「変わりたくない」と無意識的に抵抗する心が葛藤し合い、心が勝ったとき習慣化に挫折します。
心は、新たな変化に対して、以下2つ無意識の抵抗が働きます。
ホメオスタシス(恒常性)
ホメオスタシスとは
生理学者キャノン.W.B.の提唱した概念。体温調節のように、生活体が、環境の変化に対して諸器官を変化させることで、内部環境の動的平衡状態を維持しようとする自動的な機構や過程を指す
~引用 佐藤民人著 心理学キーワード大辞典~
ホメオスタシスとは、からだの内部環境を一定に保とうとする働きです。
例えば、体温が36℃代で一定に保たれているのは、ホメオスタシスの働きによるものです。
人間には現状を維持しようとする無意識の作用があります。
ホメオスタシスの働きがあるため、人は現状維持に安心を感じ、新しい変化にはストレスを感じます。
作用反作用の法則
作用反作用の法則とは
ニュートンによる運動の第3法則。 物体が他の物体に作用を及ぼす時、それとは逆向きで大きさの等しい反作用が常に働く
~引用 大辞泉~
自然界には「作用反作用の法則」があります。この法則は私達の心にも働いています。
急激なダイエットが直ぐにリバウンドしてしまうのは「作用反作用の法則」の反作用の働きによるものです。
新しく何かを始めるとき、その期待とワクワクで大きな変化をかけようとします。
例えば、夏までに20Kg減量のために「毎朝5時に起きて5Kmマラソンしよう」と決めたとします。
初日は、期待とワクワクで5Km走ることができるものですが、3日目あたりから「面倒」と感じはじめてしまうのは、今まで毎朝走ったことがない人にとって、毎朝5時に5Km走ることは、大きすぎる変化(作用)だからです。
その心理状態で新しい習慣を続けても、心にストレスがかかります。
心のストレスを無視して無理な習慣を続けると、燃え尽き症候群に陥る可能性もあります。
大きな変化(作用)は必ず大きな抵抗(反作用)を生みだします。
しかも、心には「ホメオスタシス」により今までの自分を維持しようとする力も働いています。
変わりたい < ホメオスタシス+作用反作用の法則 = 挫折
「変わりたい」という思考よりも、「今までの自分を保ちたいという気持ち」が大きくなったとき、習慣化に挫折します。
では、「変わりたい」という思考を実際の変化につなげていくためにはどうしたらいいでしょうか?
それは反作用の力を小さくしホメオスタシスに気づかれないように少しずつ変化をしていくことです。
変わりたい > ホメオスタシス+作用反作用の法則 = 新たな変化
新しい習慣を身につける7ステップ
新しい習慣を取入れていくときのポイントは、ホメオスタシスと作用反作用の抵抗に負けないように、意識的に小さな行動を積み上げていくことです。
そのために、必要な7ステップをご紹介します。
Step1 明確で具体的な目標を設定する
習慣を身に付けるときに大事なことは、最初に具体的な目標を設定することです。
例えば「ダイエット」を目標にするときは、なぜダイエットをするのか?いつまでに何キロ落とすのか?など具体的な目標にしていきます。
具体的な目標を設定するときに役立つのが「5W1H思考法」です。
- 誰が?(Who)
- なぜ?(Why)
- いつまでに?(When)
- どこで?(Where)
- なにを?(What)
- どのように?(How)
ダイエットを5W1Hで思考すると下記のようになります。
また、Step1ではしっかりと考えておくべきことがあります。それが『なぜ(Why)』と『いつまでに?(When)』です。
Whyが自己否定からはじまっていないか?
人は目標設定し新しい習慣を取入れようとするとき、必ず『理想の自分像』を描くことから思考がはじまります
。思考が『理想の自分像』を描くとき、気をつけなければならないのが、今の自分を否定して未来の自分像を描かないことです。
例えば、20Kgのダイエットしたいと目標を設定するとき「自分の健康のためにダイエット」するのと「異性にもてたいからダイエットする」のは目標設定の意味が変わってきます。
後者の目標設定の裏を返せば「ダイエットすれば、自分は異性にもてる」・「いまの自分がもてないのは、太っているからだ!」という自己否定が心の根源にあります。
でも、「ダイエットすること」と「異性にもてること」にあまり因果関係はありません。
因果関係がないのに「ダイエットすれば自分はもてる」と勘違いをして、新しい習慣を取入れると習慣を行うときに大きな抵抗を感じるようになります。
Whenに無理な期日を設定していないか?
4月に100Kgの人が8月に80 Kgになるためには、4ヶ月で-20Kgの減量、1ヶ月で5Kgの減量、1日約166gを減量していく計算になります。
これなら、達成できそうな数字ですね。
では、4ヶ月で-50Kg減量しようとしたらどうでしょうか? 1ヶ月12.5Kgの減量、1日約466gを減量していく必要があります。
無理をすれば4ヶ月で50Kg減量可能かもしれませんが、恐らく体に大きな負荷がかかり、その後の健康に問題がでる可能性があります。
お米は5月に種を蒔いて10月に収穫をします。
種蒔きから収穫までに6ヶ月間かかるのが自然の流れです。
もし、人間が作為的に収穫時期を早めようとすれば、外気温を高温にするか、田んぼに過度な肥料をまくことになると思います。
その結果、収穫時期を早めることができるかもしれません。
しかし、外気温を高温にした結果、自然界の生態系が崩れ、過度な肥料を与えられた田んぼは砂漠化するなど、いまの環境が破壊されてしまいます。
無理な期日設定は、必ず今の環境を破壊します。その期日設定が自然かどうかを見極めましょう。
Step2 小さなステップに分解をする
5W1Hで目標が具体化されたら、どのように?(HOW)を 日々行動できるレベルまでに小さく分解をしていきます。
「ホメオスタシス」は大きな変化に抵抗をします。大きな変化(作用)は大きな戻り(反作用)を発生をさせます。
よって、今の自分にとって大きな変化にならない程度で、ちょっとストレスがかかるぐらいの小さな行動を設定します。
例えば、どのように?が「毎朝5時に起きて5Km走る」であれば、最初は「毎朝に5時に起きる」という小さな行動目標にします。
Step3 1日1回小さな行動をする
Step2で目標に対して小さな行動目標を設定しましたので、Step3では行動目標を必ず実行します。「できない」の言い訳はなしです。
もし、行動目標が実行できないとき、それは「目標設定があいまい」か「今のあなたにとって、その行動目標のストレスが大きすぎる」からです。
その場合は、Step1・Step2に戻り、確実に行動できるレベルまで行動目標の再設定をしてください。
Step4 小さなフィードバックをする
Step3で設定した行動目標を実行したら、その日の夜に自分自身に対してフィードバックを行います。
フィードバックを行う際のポイントは以下のとおりです。
- 自分が思ったどおりに実行できたか?できなかったのか?
- できなかった場合、どうすれば明日できるようになるか?
- その行動目標を行った結果、自分はどう感じたか?
- 今後に向けての改善点はあるか?
もし、改善点があるようであれば、よりよい行動目標に修正をしていきます。
Step5 最低3週間(21日間)は続ける
諸説によると、新しい習慣を身に付けるためには21日間(3週間)必要と言われています。
でも、なぜ21日間なのでしょうか?
21日間の根拠は、恐らく「お釈迦様は悟りを得たが、21日間の断食修行だった」ところからきていると思います。また、『二宮金次郎』も農村改革に行き詰まったとき、成田山で21日間の断食修行の後に改革の改善策を見いだしたと言われています。
また、自然界に目を向けてみると、意外なところにも21日間が存在しています。
それは、にわとりが卵を産み、その卵が雛にかえるまでの期間が21日です。
親鳥が卵を転がしながら満遍なく暖め続けることで、21日目に雛が誕生します。
何か新しいことを心に取り入れるためには、最低でも21日間は続ける必要があります。
21日間続けることで、はじめて「ホメオスタシス」は新しいことを受け入れます。
みなさんが子どものとき、はじめて自転車に乗るときに何度も練習をしましたよね。
でも、一度乗れてしまえば、なにも考えずに乗れるようになったのと同じことです。
Step6 行動目標をレベルアップする
Step2~5を繰り返していくと、「ホメオスタシス」が新しい変化を受け入れ、最初は「やる気」が必要だと感じたことに対して、ストレスなくできるようになります。
また、逆にやらないと気持ちが悪いことに変化していきます。ここまできたら行動目標をレベルアップさせます。
例えば、今までの行動目標が「毎朝5時に起きる」であれば「5時に起きて10分間散歩にいく」など行動目標を少しずつレベルアップさせていきます。
Step7 定期的に道のフィードバックをする
行動目標がレベルアップするにつれて、実際に目にみえる変化が現われていきます。
そのときに2つの道のフィードバックを行います。
ひとつめのフィードバックは「歩んできた道を振り返り、変化に喜びを感じる」ことです。
「ホメオスタシス」を騙すために、小さな行動を積み上げてきた場合、自分自身でもその変化に気づけないという矛盾が生じます。
そのため、行動目標をある程度積み上げた時点で、自分自身にフィードバックを行い、実際に変化した点を明確にして、ここまで歩んできた自分自身を称えたり、ご褒美を購入したりします。
変化に対して肯定的なフィードバックを行うことで、自己肯定感が向上し、この後の「やる気」にもつながっていきます。
もうひとつが「目標に向けて道を再認識する」ことです。
目にみえる変化が現われたとき、それは喜ぶべきことなのですが、その一方で気を引き締める時期でもあります。
何事もうまくまわりはじめたときに最大の落とし穴があるものです。
例えば、毎朝5時に起きて10分間散歩することが、普通にできるようになると、調子にのって「よし明日から5Km走ろう!」と急激に変化をかけたくなります。
初日はできるものですが、途中から嫌になり結局は挫折。今までの積み上げを台無しにして、元の自分に戻ってしまいます。
そうならないためにも、目標全体を見なおし、今の自分が進むべき道を再認識して、再び小さなステップを積み上げていってください。
もうひとつの習慣改善
ここまで、「新しい習慣を取入れる」ことについて書いてきましたがいかがでしたでしょうか?
生活習慣を改善したいと思う場合、実はもうひとつの視点が必要です。
それが「今まで行ってきた習慣を止める」ことです。
例えば、「禁煙」が新しい習慣であれば、「喫煙」が今まで行ってきた習慣です。
実は、新しい習慣を取入れるよりも、今までやってきた習慣を止める方が難しいものです。
なぜならば、今までの習慣は「無意識的に行われている」ものがほとんどだからです。
無意識的に行われている習慣を止めるためには、まずは意識化が必要です。
無意識で行われていることを意識化していくためには、日々の出来事と感情・行動を分別して考える『認知行動療法』が役立ちます。
まとめ
習慣は第二の天性なり
習慣の力は大きなもので、生まれつきの性質と変わらないほど日常の行動に影響を及ぼす
~引用 大辞泉~
個性(天性)は生まれつきの性質で、習慣が後天的に得た性質です。
個性は変えることができませんが、習慣は変えていくことができます。
新しい習慣を取入れ生活習慣を改善するには「無意識化できるまで、小さな行動を意識的に行っていく」ことで、無意識化できるまでは努力が必要です。
いま、「簡単に生活習慣を改善できます!」といった商品がよくありますが、簡単に手に入れたものは簡単に手放します。
それは、心が伴わないからです。
「ホメオスタシス」と「作用反作用の法則」を理解し、心を伴いながら新しい習慣を作り上げていくことで、はじめて天性のような習慣を身につけられるのです。
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