みなさん、こんにちは。
心理カウンセリング空の関口です。
前回の記事で、自信について書きましたが、「自分に自信が持てない」と感じるとき必ず「劣等感」も一緒に感じています。
劣等感は「自分が他人よりも劣っている」と感じる感情ですが、その感じ方には2つの感じ方があるのをご存じですか?
ひとつが今の自分を正当化する『補償の劣等感』、もうひとつがありたい自分像になるための『成長の劣等感』です。
よく、劣等感を克服する方法として「他人と自分を比べることをやめればいい」と言います。
しかし、それは「補償の劣等感」について語られているに過ぎず、もうひとつの「成長の劣等感」のポイントを完全に見落しています。
私はカウンセリングのなかで、劣等感ついて相談を受けたとき「その劣等感を活かそうよ!」と提案をしています。
なぜならば「劣等感」こそが、その人が次のステップに進むヒントになるからです。
今日は、未来に向けた劣等感の活かし方についてご紹介します。
私が抱え続けた劣等感
過去の私も劣等感のかたまりでした。
例えば、私は大学を出ておらず「大学卒」に劣等感を感じていました。
だから「大学卒」の人と一緒に仕事をすると、その人より自分の方が能力が高いと思わせようとしたり、逆にその人より自分が劣っていると感じて、自分を落ち込ませたりと、どちらかのパターンに陥ることが多く、素直な気持ちで仕事をすることができませんでした。
また、劣等感は自分の置かれている状況により変わります。
以前、私がうつ病になり自宅に引きこもるようになってから劣等感は更に増強されました。
「大学卒」という肩書きだけではなく「スーツを着て仕事をしている人」や「レジで頑張って仕事をしている人」など、引きこもっている自分と普通に社会生活を送っている全ての人を比べ劣等感を感じるようになりました。
その劣等感が更に自分を苦しめ、更に引きこもり劣等感が強化されていくという負のスパイラルへと陥っていきました。
人間だけが劣等感をもつ理由
劣等感による負のスパイラルに陥ったとき、ある本を読み「劣等感は自分と他人を比べるからうまれる感情であり、その比べることをやめれば劣等感を克服できる」と知りました。
早速「自分と他人を比べることをやめよう」と意識しました。しかし、心のどこかで自分と他人を比べてしまい、気持ちが落ち込んでしまう日々。
この劣等感をどうやったら克服できるのだろうか?と考え続けた ある日、日向で気持ちよさそうに寝ている三毛猫に出会いました。
「猫はいいよな~。この猫には劣等感なんてないんだろうな。きっと猫は犬になりたいとも思わないだろうし、三毛猫はシャム猫になりたいとも思わない。ただありのままの自分で生きていられて、人間も猫のように生きられたらどんなに幸せだろう?」と猫のような生き方がうらやましく思いました。
しかし、そのあと「なぜ人間は他人と自分を比べて、劣等感なんて感じるようになったのだろう?」と疑問に思うようにもなりました。
そのことを考え続けた結果、ひとつの答えが見つかりました。
それは、劣等感は、人間が自分らしく成長するために必要な感情であるということです。
アドラーが語った2つの劣等感
今流行のアドラー心理学。
アドラーは劣等感について下記のように語りました。
「人は未来に向かって劣等感を克服し、優越感を求めて向上しようとする存在である。」
~重野 純著 心理学 キーワードより引用~
心には防衛機制という作用ががあります。
防衛機制とは、自己が外部環境からの危機が迫ったとき自己をなんとか守ろうとする心の作用のこと。
この防衛機制のひとつとして、アドラーは下記のようにも語っています。
「自分の弱点をカバーするために、他の望ましい特性を強調する。劣等感に由来する心理的緊張を他の側面で優れることによって解消する補償を行う。」
~重野 純著 心理学 キーワードより引用~
劣等感には「劣等感を克服し、優越感を認め求め向上しようとする」ものと「劣等感により、自分の弱点を補償しようとする」2つの感じが方があります。
もう少し具体的に書くと、劣等感には「自分の弱点を隠すために、他人よりも優れているように見せたり、逆に自分には能力がない・・・と思うことで、”いまの自分を正当化”しようとする」『補償の劣等感』と、「自分の弱点を受け入れ、それを克服し向上しようとする」『成長の劣等感』の2つがあるのです。
以前私が「大学卒の人」や「普通に社会で働いている人」と自分を比べて劣等感を感じていたのは、すべて『補償の劣等感』でした。
人と自分を比べることによって、「どうせ自分はダメなんだ・・・」と言えるようにするために「弱い自分を正当化する」だけでした。
『補償の劣等感』で悩んでいるのに、「他人と比べることをやめて、その劣等感をなくそうとする」と、弱い自分を正当化してしまい根本解決にはなりません。
劣等感を克服するうえで大事なことは「他人と自分を比べること」をやめるのではなく、「なぜ、他人と比べたいのか?」を理解することなのです。
「補償の劣等感」を「成長の劣等感」へ
もし、あなたが他人と自分を比べて「私の方が優れている」と感じたり、逆に「私には能力がない・・・」と感じるのは、あなたが『補償の劣等感』で自分のことを見ているからです。
でも、『補償の劣等感』は自分の弱さを補償しいまの自分を正当化するだけで発展性がありません。
劣等感を感じたとき、『補償の劣等感』ではなく『成長の劣等感』に感じ方をチェンジすることで感じ方が変わります。
まずは、今回もカウンセリングで実際に行っているワークを抜粋して『補償の劣等感』から『成長の劣等感』へチェンジしてみましょう。
Q1:あなたは「自分が劣っている」と感じるところはどんなところですか?
Q2:あなたが、それが劣っていると感じるのは、具体的にどんな状況ですか?
Q3:あなたは、誰と比べてそれが劣っていると感じますか?
人とのコミュニケーションや仕事の能力に劣等感がある人を想定して、サンプルの解答例も書いておきます。
Q1:あなたは”自分が劣っている”と感じるところはどんなところですか?
A:
・人とうまくコミュニケーションがとれない
・仕事の能力が低い
Q2:あなたが、それが劣っていると感じるのは、具体的にどんな状況ですか?
A:
・お客様とコミュニケーションをとるとき
・仕事のことで、上司に指摘されたとき
Q3:あなたは、誰と比べてそれが劣っていると感じますか?
A:
・お客様とのコミュニケーションが上手な、後輩のAさん
・スムーズに仕事をこなし、上司にも認められている同僚のBさん
あなたは誰と自分を比べていますか?
劣等感は自分が他人よりも劣っていると感じる感情です。だから、劣等感を感じるためには自分と比較する人が必ず存在します。
では、あなたは誰と比べて劣等感を感じていますか?、例えば、うまれたての赤ちゃんと比べて劣等感を感じますか?、100歳のお年寄りと比べて劣等感を感じますか?
いまの自分とかけ離れた人を比べても劣等感を感じることはありません。劣等感は身近なある人と自分を比べて涌き起こる感情です。
では、なぜあなたは、その人と自分を比べてしまうのでしょうか ?
Q4:なぜ、あなたは、その人と自分を比べてしまうのでしょうか?
本当は「ありたい自分」の自分像と比べている
もしかしたら、あなたが劣等感を感じる相手は、あなたが「そのような人になりたい」というあこがれを持っているからではないですか?
コミュニケーションが得意な後輩のAさんと自分を比べてしまうのは「Aさんのようにコミュニケーションができるようになりたい」と思っているからではないですか?
同僚のBさんと比べて自分が落ち込んでしまうのは、心のどこかで「Bさんの様にスムーズに仕事できるようになりたい」と思っているからではないですか?
劣等感は、あなたのありたい自分像と現状の自分を比べて涌き起こる感情です。
このことを少し言い換えると、
劣等感が、あなたのありたい自分像に気づかせてくれるのです。
この考えが、アドラーが語った「未来からの劣等感」の真意だと私は思います。
そして、劣等感をそう捉えることができたとき、ただ「自分には能力がない・・・」と落ち込むのではなく、未来の自分に向かって今日やるべきことが見えてきます。
劣等感を感じる人を観察して真似してみよう
劣等感は、あなたのありたい自己イメージ像との対比です。
ここで間違えてはならないのはあなたがAさんやBさんのようになる必要はありません。「あなたはあなたのまま」でいてください。
ただ、あなたは、Aさんのようなコミュニケーション術とか、Bさんのように仕事をスムーズに熟せる”能力”を身に付けたいとも思っているので、その箇所を真似ればいいのです。
では、具体的にどのように真似ればいいのでしょうか? ワークで書き出されたところQ3→Q2→Q1の順で考えると見えてきます。
例えば、お客様と上手にコミュニケーションをとるAさんに対して、今まであなたは劣等感を感じていたとします。
劣等感はありたい自分のイメージ像と対比で涌き起こる感情なので、あなたはAさんのようにお客様とコミュニケーションを上手にとりたいと思っています。
よって、あなたがAさんの観察するべきポイントは「お客様との上手なコミュニケーション」です。
そのうえで、質問です。
Q6:あなたが、Aさんとお客さんのコミュニケーションを見て”ここが上手だ!”と感じるのはどんなところですか?
例)
・笑顔で話しをしている。
・語尾がハッキリとしている。
・相手の話をよく聞いている。
・相手の話をオウム返しで返している 。
きっと、いろいろと見習うポイントが出てくると思います。そのポイントが、これから真似すべき項目になります。
昨日の自分と今日の自分を比べよう!
Aさんの真似すべき項目が具体的になり、実際に真似てみても直ぐには”Aさんのようにうまく”できません。
すると、心の中で『補償の劣等感』が涌き起こり「やっぱり自分には能力がない・・・」と落ち込みたくなります。
でも、ここで諦めないでください。
大事なとことなので何度も繰り返しますが、劣等感を感じるのは、あなたのありたい自分像と現状の自分を比べたときです。
ありたいセルフイメージと自分を比べて「やっぱり自分には能力がない・・・」と思い込ませて行動をやめさせ今までの自分を保とうとするのが、補償の劣等感の常套手段です。
それでも、やっぱり「できるAさん」と「できない自分」を比べたくなるものです。そのときは「今日の自分」と「昨日の自分」を比べてみましょう。
例えば、実際にAさんの見習いポイントを今日真似て見てうまくいかなかったとすします。でも、今日実際に真似てみた自分は確かに存在します。それは、昨日の自分よりもありたい自分像に少しだけ近づけた今日の自分です。
その自分を認めてあげましょう。
まとめ
劣等感を感じたときに、単純に誰かと比べることをやめてしまうと、あなたのありたいセルフイメージ象も一緒に消えてしまいます。
なぜならば、劣等感を感じるときは、あなたのありたいセルフイメージ象と現状の自分を比べたときだからです。
よって、劣等感を感じたときは、自分と人を比べることをやめるのではなく、まずは、なぜ自分とその人を比べてしまうのか?を理解することです。
そのうえで、自分の弱さを認めたうえで、劣等感を感じるポイントを明確化すること。
そして、未来の自分に向けてやるべきことを考え、真似ていくことで劣等感は活かせるものに変わっていくのです。
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