みなさん、こんにちは。
心理カウンセリング空の関口剛史です。
みなさんは、過去に嫌な経験をしたことがありますか?
そして、その経験のときの記憶を鮮明に覚えているでしょうか。
人は、良い経験よりも嫌な経験の方を鮮明に記憶してしまうようです。
嫌な経験を記憶するだけであれば問題ありませんが、嫌な経験と同じような状況になったときに、嫌な記憶を思い出して過度に萎縮してしまうことがあります。
先日、カウンセリングを受けたA君もその1人。
A君は仕事でミスをし上司から叱られたことで、過去の嫌な記憶を思い出し萎縮してしまい、更に仕事でミスが続くという悪循環に陥ってしまいました。
今日は「勇気を持って嫌な記憶の1歩先へ」について書いていきます。
勇気をもって嫌な記憶の1歩先へ
A君は、とても素直で性格よく、人のことを思いやれる優しい方です。
A君には、学生時代に関わりのあった大人から感情的に罵倒され続けた経験がありました。
A君は、大人から感情的に罵倒され続けたときに反論することなく誰かに相談することもなく我慢し続けたそうです。
しかし、その経験がA君の心の傷となり、人から感情的に叱責されることを無意識に恐れるようになっていました。
社会人になってから、少しでも人から叱られると過度に萎縮してしまい、更にミスを連発してしまう悪循環にいつも陥ってしまいました。
先日、A君から「上司から叱られてしまい、気持ちを立て直せない」という相談がありました。
A君のお話を聞くと、A君が仕事でミスをしてしまい、その結果、上司から叱られてしまったとのこと
A君の心の中では、上司から叱られたことと青年期に罵倒されていた記憶が紐付いている感じでした。
A君の話を聞いたあとひとつの質問をしました。
「上司は、A君を感情的に君を罵倒しているの?、それとも仕事を覚えてほしくて叱っているのどちらだろう」と。
A君はしばらく考えたあとで「上司は叱っているなかで、次をこうしたらいい!」という改善も教えてくれているので、後者だと思うとのこと。
「では、以前罵倒した大人とはちがい、上司はA君に仕事を覚えて欲しくて少し感情的に叱っているということだね」と記憶と現状のちがいを整理したうえで、「A君はどういう姿勢で叱られているの?」と質問しました。
A君は「人から叱られるがとても怖いので、うつむいて聞いている感じです」とのこと。
おそらく、上司が感情的に叱ってしまうのは、A君が直ぐにうつむいてしまい、上司の考えや思いがA君に伝わったかどうかがわらないから。
A君の心の中では「感情的に叱られること=罵倒されること」が記憶として紐付けされていて、その紐付けを解かないと、これからも上司に萎縮してしまう。
上司に萎縮をしてしまうから、仕事でミスをすることを過度に恐れてしまい、A君本来のパフォーマンスを発揮できずに結果としてミスをしてしまう。
過去の嫌な記憶に現実を支配されて、A君本来の能力を発揮できないのはもったいない。A君には嫌な記憶の1歩先へ進んで欲しいと私は思いました。
そこで「とても勇気のいることだけど、次に上司から叱られたときは上司の目をしっかり見て、ミスをしたことを素直に謝ること。上司が伝えようしていることをしっかり聞いてわかりました。ありがとうございます。と伝えてみよう」とA君に課題を設定しました。
A君にとって、この課題は上司と心の中の嫌な記憶とも向き合う必要があり、とても怖いもので勇気がいることを重々承知のうえ設定しました。
後日、A君は上司に叱られ際に「上司の目を見て、ミスを素直に謝り、上司のアドバイスに対してもわかりました。ありがとうございました」と伝えられたとのこと。
それから、上司が感情的に叱ることは少なくなり、上司を過度に恐れることもなくなったので、仕事のミスが少なくなったとのこと。
また、人から感情的に何かを言われても「自分は大丈夫」と思えるようになり「それが仕事への自信にもつながりました」とのことでした。
A君の心の中の「感情的に怒られること=罵倒されること」の記憶が「感情的に怒られること=自分はそれでも大丈夫」に上書きできたのだと思います。
過去の嫌な記憶を上書きするには、嫌だと感じることと向き合うことが必要なので、とても勇気がいることです。
最終的には、A君が勇気を出して嫌な記憶の1歩先へ進めたことで、本来の自分を取り戻せたのだと思います。
まとめ
人は、良い経験よりも嫌な経験の方を鮮明に記憶してしまうようです。
それは、嫌な経験をしないように自分を防衛するためです。
だから、過去のつらい経験をしたときと同じような状況になったとき、過去の記憶を思い出して今の自分を守ろうとしてしまうのです。
もし、過去の記憶を使い今の自分を守ることで、目の前の問題を乗り越えられるのであれば、自分を防衛してもいいと思います。
しかし、A君のように過去の記憶に囚われて、いま乗り越えなくてなならない問題に直面したときは、勇気を出して過去の記憶と向き合い1歩先へ進めて、新しい記憶に上書きすることが必要だと思います。
私自身も、自分がうつになったときの記憶は鮮明に覚えています。
しかし、記憶を鮮明に覚えているから、うつになった当時の嫌な記憶に現実を支配されそうなときに、当時の自分とは異なる選択をするようにしています。
過去の嫌な記憶に支配されるのではなく、嫌な記憶と対話しながら、新しい記憶を作っていくことが、生きていくうえでは大切だと感じます。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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