心理カウンセリング空の関口です。
今回はGTD(Getting Things Done)という思考ツール(考え方)について書いていきます。
以前の記事でもご紹介しましたが、情報化社会の現代は、多くの物事がインターネットにつながり、大変便利に生活できるようになりました。
しかし、その反面、様々な情報に追われ、一方的に送信されてくるコミュニケーションに疲れ、多くのストレスを感じるストレス社会であることも、情報化社会の特徴だと思います。
膨大な情報や一方的なコミュニケーションにより、自分の「気にかかること」・「やるべきこと」が多くなると、思考と心の ゆとり がなくなり、「自分はどうしていいのか?」がわからなくなります。
また、「気にかかること」や「やるべきこと」で心がいっぱいになると、人は「やる気」を失い、自分の意思で行動することも難しくなります。
GTDは、ビジネスパーソン向けに語られることが多いのですが、実はGTDの考え方は、自分の悩みや問題を解決してく過程でも使える思考ツール(考え方)です。
ライフ・カウンセリングでは、GTDの考え方を取入れたカウンセリングを行っており、引きこもりだった方が社会復帰したり、長年診療内科に通われていた方が無事に卒業できたりと、成果を発揮しております。
今回は、GTDが必要な理由と、GTDの目的、GTDの実践方法についてご紹介します。
大きな岩と小さな岩
GTDのお話をするまえに、ひとつのたとえ話をします。
みなさんは車でひとり旅に出ました。直進の道を心地良く走り、もう少しで目的地に到着です。
その目的地はみなさんが長らく憧れていた理想の場所です。
すると、目の前に”大きな岩”が現われました。
ひとりの力ではどうすることもできないような大きな岩。
この様な状況になったら、みなさんはどうしますか?
自分の力ではどうにもならないような”大きな岩”であれば、「なにもできない」ので目的地を諦めるしかありません。
では、目の前に現われたのが、”大きな岩”ではなく、ひとりの力でどうにかなりそうな”小さな岩の集まり”だったら、みなさんはどうしますか?
きっと、小さな岩をひとつひとつどかして、目的地に進もうとするのではないでしょうか?
行く手をふさいでいた”大きな岩”と”小さな岩”。
同じ岩なのに、”大きな岩”であれば目的地を諦め、”小さな岩”であれば、岩をどかして前に進もうとする。
これが人間の心にある仕組みのひとつです。
では、目の前に現われたのは”大きな岩”、だけど、岩を砕く道具をもっていたら、みなさんはどうしますか?
自分が本当に行きたい目的地であれば、”大きな岩”を”小さな岩”に砕いてでも、前に進もうとするのではないでしょうか?
これから紹介するGTDは、”大きな岩”を”小さな岩”へと砕き、人生を前へすすめるための道具(思考ツール)なのです。
悩みや問題を抱えたときにGTDが必要な理由
悩みや問題を抱えてしまったとき、その悩みや問題をとても大きく感じて、「もう自分ではどうすることができない、もう諦めるしかない・・・」と感じた経験はありませんか?。
私はうつ病になったとき、抱えた問題がとても大きすぎて、ひとりではどうすることができませんでした。
先に例えた、”大きな岩”に人生の行く手をふさがれた状態でした。
でも、人生を簡単に諦めるわけにはいきません。
なんとかして、大きな岩をどかそうとして、思考錯誤したのですが、やっぱり、うつ病はひとりの力ではどうにかなるような岩ではありませんでした。
「もう自分はダメなのか・・・」と思いはじめたときに出会ったのがGTDという思考ツールです。
悩みや問題を抱えてしまったとき、その苦しさから、悩みや問題を解決できる方法を探そうとします。
でも、それはいきなり大きな岩を動かそうとするようなもので、直ぐに解決できる方法は見つからないもの。
仮に解決方法が見つかったとしても、その方法を実行するときに、大きな恐怖心と戦うことになります。
悩みや問題を抱えてしまったときは、解決できる方法を探すのではなく、まずは、その悩みや問題を明確にしてから、小さく分解することが最初の1歩。
GTDのワーククロー沿って考えることで、悩みや問題を、小さくすることができます。GTDはビジネスシーンで活用されている思考ツールですが、実は、悩みや問題を解決するときにも活用できるツールなのです。
GTDの目的
GTD(Getting Things Done)とは、デビット・アラン氏が提唱したワークフローのひとつ。
いろいろな情報や出来事・問題が湯水のごとく溢れでる現代社会において、自分の”気にかかること”や”やるべきこと”を効率よく整理し、思考をクリアにしながらいま目の前のことに集中できるようにする思考ツールです。
みなさんは、趣味や楽しい事をしているとき、時間を忘れひとつのことに没頭した経験はありませんか?
この状態を「フロー状態」といい、ひとつのことに意識が集中された状態です。
人は、フロー状態に入ると、時を忘れ、脳が活性化し、高いパフォーマンスを発揮します。
人間の脳はひとつのことしか処理できません。よって、頭の中で、あれもこれも気にかけていたり、漠然と悩みを抱えていたのでは、脳にストレスがかかり、フロー状態には入れません。
GTDの目的は、”気にかかること”や”やるべきこと”をワークフローに沿って整理することで、思考をクリアにし、いま目の前のことに集中できるフロー状態を作りだすことなのです。
GTDのワークフロー
GTDの最大の特徴は、”気になる事”と”やるべき事”をすべて書き出し『INBOX』にいれ、そこから、処理6までのワーククローをとおすことにより、自分がいまやるべきことを明確にしていくこと。
以下、『INBOX』から処理6までをご紹介します。
INBOX(気になることリスト)
GTDをはじめるあたり、まずは頭の中や心の中にある”気になること”・”やるべきこと”・”やりたいこと”を【すべて書き出す】こと。
できるかどうか?いつできるのか?など、現実的な評価をせずに、頭の中に詰まっているもの、心の中でモヤモヤしているものを、思いのまますべて紙に書き出します。
次に、紙に書き出された言葉の語尾に「する」・「したい」を付け加えます。例えば、「ストレス」が気にかかるようであれば、「ストレスを解消したい」といった感じで語尾を付け加え、リスト化していきます。
また、GTDの運用をはじめた後、”気にかかったこと”・”やるべきこと”は、とりあえずINBOXに書き出しリスト化していく習慣化をつけます。
INBOX上で書き出しリスト化するだけでも、思考や心はクリアになっていきます。そして思考がクリアになった状態で、次の処理1へとすすみます。
処理1(いま自分が行動を起こすべきか?)
INBOXにリストができたら、リストに書かれた物事について【いまの自分が行動を起こすべきか?】を問いかけます。
その答えとして【いま行動を起こすべき物事】はタスク(やるべき行動)として次の処理2へすすめます。今の自分が行動を起こす物事でないものは、次の以下の3つに分類します。
いつかやる・たぶんやるリスト
将来のビジョン、まだ具体的でない物事、どうしていいか分からない物事については『いつかやる・たぶんやるリスト』として書き出します。
参照フォルダ
まだ具体的な物事ではないけれど今後必要になりそうな情報や思いなどは『参照フォルダ』として書き出し保存します。
『参照フォルダ』は、いつでも参照できる状態にすることが望ましいです。そうすることで【この考えや思いを安心して手放すことができる】からです。
ゴミ箱
なんとなく頭の中に詰まっていた、心の中で気になっていた、けれど具体的にどうしていいか解らないものが意外に多いものです。
特に【自分自身ではコントロールできないこと】については、思い切って『ゴミ箱』に捨てましょう。例えば、「うつ病を治したい」のようなことは、自分ではコントロールできないことなので、それは『ゴミ箱』へ廃棄して忘れるか、自分自身がコントロールできるレベルまで考えたあと、タスク化して処理2へすすめます。
処理2(次にとる行動はひとつか?)
ここでは処理1から流れてきたタスクを具体化・細分化(プロジェクト化)します。
人間が考える物事の多くは漠然とした考えであったり思いであったりするので、処理2では【その物事を現実にするためには、どんな手順が必要か?】を問いかけます。
手順が必要なタスク、例えば「休職状態から職場復帰をしたい」というタスクであれば「今の状態から職場復帰するまでに、どんな手順が必要か?」を考えます。
すると「職場復帰したい」という一言を実現するためには「気持ちを安定させる」・「会社までいく訓練をする」・「上司に連絡する」など、様々のタスクが洗い出されます。
それら洗い出されたタスクを『プロジェクトリスト』として書き出していきます。逆に手順がない簡単なタスクであれば、そのまま処理3へすすめます。
タスクをプロジェクト化するときの注意点として、 1つのタスクを恐怖心を感じないところまで具体化・細分化することです。
例えば「休職状態から、いきなり職場復帰する」ことは、とても不安で恐いと感じることです。
でも「最寄り駅まで歩いてみる」というタスクであれば、できそうですよね。
大切なことは、自分が思い描く目標に向けて、必要なタスクを、【今日の自分でできそうなところ】まで具体化・細分化することです。不安や抵抗が小さければ小さいほど、人は行動しやすくなるからです。
処理3(10分以内でできるか?)
処理3に該当するタスクは手順が少ない簡単なタスクか【今日の自分でできそうなところ】まで細分化・具体化されたタスクです。
このタスクの中から【自分が10分以内でできるもの】を、すぐに実行します。10分以上要するタスクは処理4へすすめます。
私もそうなのですが、悩みを抱えてしまう人の特徴として、先のことをあれやこれやと考えてしまう思考グセがあります。もちろん、先のことを考えることは悪い事ではありません。
ただ、10分でできてしまいそうなタスクの先のことを考えても意味も効果もありません。であるならば、先のことを考えるよりも、とりあえずやってみることを優先しましょう。
もし、それでも先のことを考えないと不安を感じるタスクは、タスクが大きすぎるので、処理2に戻り、不安がなくなるまで、具体化・細分化しましょう。
処理4(自分でやるべきことか?)
処理4では、タスクを見て、【人に依頼できるタスクか?】を考えます。
悩み落ち込んでいるときは、なんでもかんでも自分で抱え込んでしまい、すべてを自分で解決しようとしてしまいます。
でも、人には得意・不得意があります。
もし、リストアップされたタスクを見て自分には不得意なことや、誰かにお願いできそうなことがあれば素直にお願いをしてみましょう。
ただ、この時になんでもかんでも他人にお願いするのではなく、自分が「将来できるようになりたいようなこと」については、時間と能力を投資する必要があります。
その場合は、”未来に実現したいタスク”として、『INBOX』もしくは『いつかやるリスト』に入れておきましょう。
処理5(いつやるべきか?)
タスクの中には、あるタイミングで行うべきものがあります。
そういうタスクは【実行するべき予定タスク】として『スケジュール帳』に予定として記載し、そのタイミングで必ず実行するようにします。
ここでは、日々の”スケジュール”とGTDの”やるべき事”が1つの紙面で管理されていることが望ましいです。
処理6(次にとる行動リスト)
処理6まで残ったタスクは、【近々に自分でやるべきことだけど、いつ行うべきか?】が決まっていないタスクです。それらのタスクは『次にとる行動』リストとして管理をします。
『次にとる行動』リストを見て、具体的な行動が曖昧であったり、不安感が大きすぎたりするタスクは、再度INBOXに入れて見直します。
また、この『次にとる行動』リストは1週間~1ヶ月で行いきれるボリュームが望ましいです。
なぜならば、このリストがタスクで肥大化していると、やるべきことに圧倒され、やる気を失うからです。
GTDを循環させるレビュー
頭に詰まっていたもの、心の中でもやもやしていたものをすべて書き出し、上記のGTDフローに沿って処理することによって、自分がやるべきことが明確になり、思考や心がスッキリとクリアになります。
しかし、ここで満足をしてはなりません。なぜならば、GTDは、日々GTDを循環させてこそ本領を発揮するからです。
GTDの本領を発揮させるためには、定期的なレビューを行うことです。そして、レビューを行うための時間をしっかりと確保することが大切です。
私は以下3つのレビューをオススメしています。
月次レビュー
毎月月初に行うレビューで『いつかやる/たぶんやるリスト』を見なおし、そのリストのなかで、実行したいタスクがあれば、タスクを具体化・細分化し、新しい『プロジェクトリスト』として登録します。
また、自分の頭と心の中で懸案事項がないかを確認し、あれば『INBOX』に入れます。
週次レビュー
毎週月曜日に行うレビューで『プロジェクトリスト』・『次にとる行動リスト』から、今週行うべきタスクをピックアップし、タスクの締め切りを今週中に設定します。
また、自分の頭と心の中で懸案事項がないかを確認し、あれば『INBOX』に入れます。
日時レビュー
毎朝行うレビューで『INBOX』の整理と、『プロジェクトリスト』・『次にとる行動リスト』・『今週中締めのタスク』から、今日行うべきタスクをピックアップし実行します。
1日に3つ~5つのタスクをピックアップし、実行するようにすると、気持ちも前向きになっていきます。
あとはやってみる!
頭の中に詰まっていたもの、心の中でモヤモヤしていたものを、すべて書き出し、GTDのワークフローに沿って処理をすることで、今日、自分がやるべきこと・自分ができそうなことが明確になってきたと思います。ここまできたら、あとは【行動するだけ】です。
最初は【行動する】ことに抵抗や不安を感じるものです。
でも、ここまできたら、あとは新しい1歩を踏み出せるかどうかの問題です。
もし、今の現状を打開したいと思うのであれば、それは、ご自身で新しい1歩を踏み出す必要があります。そして、1歩踏み出せば、自然と2歩3歩を進みだせるのです。
まとめ
GTDの目的からワークフローまでご紹介してきましたがいかがでしたでしょうか?
最近、マインド・フルネスという言葉をよく聞きます。マインド・フルネスは、自分の意識をいまここに集約し、高い集中力を発揮する手法のひとつです。
そういう意味では、マインド・フルネスもGTDも同じ効果を得られると思います。
繰り返しになりますが、GTDの目的は、”気にかかること”・”やるべきこと”を洗い出し、それらをワークフローに沿って【処理】することによって、思考と心をクリアにし、1つのことに集中して取り組めるフロー状態を作り出すことです。
最初は、GTDを難しく感じると思いますが、それでも少しずつ実践をしていくことで、気持ちが前向きになっていきますので、興味がある方は、騙されたと思ってやってみてください。
参考文献
デビット・アレン はじめてのGTD ストレスフリーの整理術
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