「もう安心」が一番危ない―抑圧からの解放に潜む罠

    カウンセリングSORAの関口です。

    これまでの自分自身の人生を振り返るとともに、多くの方々から寄せられた人生相談を思い返す中で、私は「人生をより良く生きるためには、人としての生き方を学ぶことが大切だ」と実感しています。

    人としての生き方を知ることで、これから歩むべき道が少しずつ見えてくるからです。

    そこで、みなさまの人生に少しでも役立つヒントをお届けできればと思い、人としての生き方に学べる書籍を引用しながら、1日1文のブログを綴っています。

    しばらくの間は、「イソップ寓話」からの引用をもとに、生き方について一緒に考えていきたいと思います。

    目次
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    今日の言葉

    イソップ寓話より引用

    78)船旅をする人々
    人々が船に乗りこんで航海に出た。ところが、沖に出たところで大時化となり、船は今にも沈みそうになった。
    乗客の一人は着物を引き裂き、泣きわめきながら祖国の神々に呼びかけて、皆の命が救われたなら、感謝の供物を捧げると約束した。
    嵐が止み、感が戻ると、九死に一生を得たというので、彼らは祝宴を張り、踊ったり跳ねたりした。
    舵取りはしかし堅実な男であったので、彼らに対して言うには、「皆の衆、われわれは、ひょっとしたらまた嵐になるかもしれね、というつもりで喜ばねばなりませんぞ」 運は回りもの、ということをよく心にとめて、幸運にもはしゃぎ過ぎぬように、とこの話は教えている。
    【引用元 岩波文庫 イソップ寓話集 著 イソップ 翻訳 中務哲朗】

    「もう安心」が一番危ない―抑圧からの解放に潜む罠

    心理学者であり、ナチスの強制収容所に収監されたV.E.フランクルは、極限状態に置かれた人間の精神は、「否定」「抑圧」「解放」の三段階を経ると述べています。

    そして、この三段階の中で、最も精神的に危険なのは「解放」の時期であると語っています。

    フランクルの著書『夜と霧』には、次のような一節があります。

    強制収容所から解放された収容者が、もはや精神的なケアを必要としないと考えるのは誤りだ。長い間、恐ろしいほどの精神的抑圧の下に置かれていた人間は、解放された直後、いや、まさにその突然の解放によって、精神的な危機にさらされることがある。この危機とは、いわば精神的な潜水病に他ならない。強い圧力から急に解放されたことで、精神の健康が損なわれる場合があるのだ。

    ――『夜と霧』より引用

    イソップ寓話の「船旅をする人々」でも、同様の心理の動きが描かれています。

    嵐によって船が沈みかけるという極限の状況に直面した乗員たちは、強い抑圧状態に置かれます。

    しかし嵐を乗り越え、九死に一生を得た後、その緊張から一気に解放され、喜びに沸き立ちます。

    それを見た一人の堅実な男が、「また嵐が来るかもしれないから、落ち着け」と声をかけ、彼らの精神を鎮めようとします。

    おそらく彼は、解放の瞬間こそが最も危ういことを本能的に理解していたのでしょう。

    ストレス社会と言われる現代では、多くの人が日々何らかの「抑圧(ストレス)」を抱えて生きています。

    その抑圧を放置して蓄積させ、一気に爆発させてしまうことは、心のバランスを大きく崩す原因となりかねません。

    実際に、大きなプロジェクト後の虚脱感受験終了後の燃え尽き症候群長期休暇明けのうつ状態などは、強い緊張状態からの解放によって起こる「心の反動」と言えるでしょう。

    だからこそ、ストレスは日頃から少しずつ発散し、圧力を溜め込まないことが大切です。

    イソップ寓話の「船旅をする人々」を読みながら、私はそんなことを感じました。

    今日の問いかけ

    「定期的にストレスを発散していますか」

    運動・散策・カラオケなど、あなたの好きな方法で、心にたまったものを定期的に解放しておきましょう。

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