みなさん、こんにちは。
心理カウンセリング空の関口剛史です。
人はそれぞれが抱える悩みや問題は異なりますが、共通していることは、悩みや問題を抱える人々は必ず心の中に何らかの思いを抱いているということです。
逆に言えば、思いがあるからこそ悩みが生じるとも言えます。
今回は、看護師Aさんの事例を元に、心の中の思いについて書いていきます。
心の中にある思いを育てよう
Aさんはプライベートと仕事で悩み続け、うつ病になってしまいました。彼女は看護師として働いていました。
うつ病の状態でも仕事を続けていましたが、長い間、解決策が見えずにカウンセリングを受けました。
Aさんの主な相談内容は仕事についてでした。
「現職は給料が良く、勤務時間も短い。うつ病を抱える私にとっては恵まれた職場だと思う。しかし、毎日仕事に行くのがつらい。職場の人間関係は悪くないが、良いとも言えない」とのことでした。
Aさんの話を聞いていると、仕事自体がつらいのではなく、心の中の思いを表現できない環境がつらいのだと感じました。
そこで、Aさんに「なぜ看護師になろうと思ったのか?」と尋ねたところ、彼女は「困っている人の手助けができるから」と答えました。
次に、「現職で患者さんの手助けはできていますか?」と問うと、「現職は効率化が重視されているため、患者さんにゆっくりと関わる時間はない」とのことでした。
最後に、「なぜ現職を選んだのか?」と尋ねると、「うつ病であるため、勤務時間が短く、将来の不安に備えて給料が良い職場だったから」と答えました。
これらの会話から、Aさんの心には以下の3つの思いがあることがわかります。
- 困っている人の手助けをしたい
- うつ病になったため、勤務時間の短い職場が良い
- 将来が不安なので、給料の良い会社で働きたい
Aさんは、2と3の思いを優先して行動していました。もちろん、生活を続けていくためには必要な選択です。
では、なぜ勤務時間も短く、給料も良い職場で働いていても、仕事に行くことがつらいのでしょうか。
それは、「困っている人の手助けをしたい」というAさんの心の中の思いが、うつ病や将来への不安を理由に、仕事でもプライベートでも抑圧されているからです。
数回のカウンセリング後、Aさんが自分の思いに気づき始めた頃、今後のことについて話し合いました。
Aさんは「手助けをしたいという思いはあるけど、今の職場では効率化が優先されているため、これを実現するためには転職しなければならない。しかし、うつ病の私が現職を辞めて転職活動するなんて無理だ」と語りました。
これはよくある二者択一の思考パターンです。
しかし、大切なことは、いきなり環境を変えるのではなく、現在の環境のままで、心の思いに沿った小さな行動を探すことです。それは、心の中の思いを育てることでもあります。
そこで、Aさんと一緒に「現職を続けながら、患者さんの手助けになりそうなことは何か?」を考えたところ、「患者さんにしっかりと挨拶をする」というアイデアが出てきました。
そして、Aさんは職場でこれを実践し始めました。
最初は「おはようございます」と挨拶する程度だったものが、徐々に日常会話に発展し、やがては患者さんを思いやる声掛けができるようになりました。
効率化を求める職場では少し浮いた存在になったようですが、Aさんは声かけを続け、自信を持つようになりました。
それからうつ症状も徐々に和らぎ、Aさんは本来の自分を取り戻していきました。
そして、現職で物足りなさを感じ始めたとき、Aさんは転職を決意しました。
以前は給料と労働条件で職場を選んでいましたが、今回は「自分の思いに合う職場」を探したところ、「患者さんに寄り添う看護」をビジョンとする会社を見つけ、そこに転職しました。
転職してから数年が経ちますが、Aさんは今でもその会社でやりがいを感じて頑張っています。もちろん、うつ症状もなくなり、プライベートも充実しているようです。
Aさんは自分の心の思いに従う生き方を選んだことで、人生が前向きに変わったのだと思います。
まとめ
人間は生まれたときから使命や天命が定められているかもしれません。
それは心の種のようなもので、その心の種が心の思いとなり、その思いに従って生きることが大切だと思います。
逆に、心の思いと合わない選択や行動をすると、悩みや問題が生じます。
残念ながら、心の中の思いは無意識に存在しているため、日常生活では気づきにくいものです。
しかし、Aさんのように悩みや問題があるときこそ、自分自身と向き合うことで、心の中の思いに気づくことができるのだと、カウンセリングを通じて感じました。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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