トラウマとして記憶に刻まれるとき

    トラウマという言葉をご存じですか?

    トラウマをひと言で説明すると「過去に受けた強い心理的な傷がその後も心理的な抵抗として残り続ける」こと。

    例えば、子どもの頃に高いところから落ち怖い思いをしたら、大人のとき高所恐怖症になったりする。

    僕らは大きなトラウマもよりも、子どもの頃に経験した小さなトラウマをたくさん抱えて生きていると思う。

    小学校でみんなの前で発表をしたら失敗をして笑われた。そしたら発表をするのが怖くなった。

    何気なく言った自分のひと言で、親友を傷つけが嫌われ、自分の本心を言えなくなった。

    子どもの頃に経験した小さいトラウマが、今の人の自分の行動の心理的抵抗になっていることが多い。

    ファームでとある仕事をするときこのトラウマの原理を上手く使うものがあります。

    それは、タヌキやアライグマを防除する電柵(微電流が流れるネット)です。

    いま、里山が荒れたため、”たぬき”・”アライグマ”・”ハクビシン”などの野生動物が人里まで出没をします。

    “アライグマ”といえばかわいいイメージがあるかもしれませんが、農家にとっては農作物を食べ荒らしてしまう困った動物。

    そのために、作物を守るために電柵を使います。

    電柵は、柵に一定間隔で電気を流し、柵に振れると電気ショックを与えるものです。この電柵の目的は、農作物に近寄る動物達にトラウマを与えることにあります。

    アライグマやハクビシンから作物を守るために張る電柵は高さが約1mぐらいのです。しかし、1mはアライグマやハクビシンなのど野生動物の身体能力では軽々跳越えられる高さですが、彼らはその能力を使いません。

    野生動物たちが新しいフィールドに入るとき、自分の安全を確保するために必ず鼻を使いながら探索行動をとります。

    その探索行動で目の前に障害物を感知したとき、障害物が安全と確認が出来れば彼らは優れた身体能力で軽く障害物を跳越えてきます。

    しかし、その逆に探索行動で危険なことに遭遇すると、彼らはそれ以上立ち入らない行動特性をもっています。

    電柵は、彼らの探査行動のときに電気でトラウマ(衝撃)を与える目的で使います。

    そうすることで、動物たちは次回からそのフィールドに侵入しようと、電柵を跳越えようと思わなくなるからです。障害物を跳越えられる能力を持っていたとしても。

    少し話しがそれますが、昆虫・動物類は、同じような特性があるようです。

    例えば小さいノミ。ノミはあの小さい体で、ものすごいジャンプ力をもっています。人間であればスカイツリーぐらいをジャンプできる能力でしょう。

    そのノミに、低い天上がついた箱をかぶせます。するとノミはジャンプをする度に天上にぶつかります。しばらくしてから、箱を外すと、ノミは天上以上の高さにはジャンプしなくなるそうです。

    もうひとつの例えで大きいゾウ。

     インドなどで人間に飼われている象は、逃げ出さないように小さな杭でつながれているそうです。

    小さな杭は象が引っ張れば折れてしまうようなもの。

    でも象は引っ張ろうとはしない。なぜならば、象はその杭は抜けないと思い込んでいるから。

    子像の時から同じ杭で固定をされいて、力がない子象の時には、その杭は抜けないため「杭は抜けないもの」と思い込み、大人になっても抜こうとは思わない。

    ノミもアライグマもゾウも、とても高い身体能力をもっているのに、何かのきっかけで、その能力を使わなくなってしまう。

    もしかしたら、人も同じなのかも知れませんね。

    ノミもアライグマもゾウも、何か傷つき痛い思いをしたり、小さい時に無理だと感じたり、ちょっとした経験・体験で、自分の本当の力を抑えてしまう。

    子どもの時、無邪気に遊んでいたら、ちょっとしたことで怒られてしまった。

    友だちから言われたひと言が心が傷ついた。

    子どものときのちょっとしたことが、いまの自分の抑制していることがある。

    僕自身もいまでもあります。

    でも、僕らは成長をして身体も心も大人になりました。

    小さい心が傷ついたことも、もしかしたら、今の心であれば乗り越えられるかもしれない。

    きっと何となく嫌だ、不安だと感じたその先に、新しい自分へのスタートがあるのではないでしょうか。

    P.S
    人里にタヌキやハクビシンやアライグマが降りてくるようになったのは、「かわいい」だけでアライグマを輸入したり、人間が里山の管理をしなくなったことで、山が荒れた結果にあるのだと思います。

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