子どもを褒める意味を考える|イソップ寓話「盗みをする子と母親」より

    カウンセリングSORAの関口です。

    これまでの自分自身の人生を振り返るとともに、多くの方々から寄せられた人生相談を思い返す中で、私は
    「人生をより良く生きるためには、人としての生き方を学ぶことが大切だ」
    と実感しています。

    人としての生き方を知ることで、これから歩むべき道が、少しずつ見えてくるからです。

    そこで、みなさまの人生に少しでも役立つヒントをお届けできればと思い、人としての生き方を学べる書籍を引用しながらブログを綴っています。

    しばらくの間は、「イソップ寓話」からの引用をもとに、生き方について一緒に考えていきたいと思います。

    目次
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    今日の言葉

    イソップ寓話より引用

    200)盗みをする子と母親

    子供が学校で友だちの書板をくすね、母親に持ち帰った。母親は打擲しないばかりか、これを褒めたので、二度目には着物を盗んで手渡すと、前にもまして感心してくれた。

    時が移り、この少年も若者になった頃には、もっと大きな盗みに手を染めるようになっていたが、ある時、盗みの現場を捕まって、後手に縛られ、処刑場へ引かれて行った。

    母親がその後を追い、胸を叩いて嘆いていると、若者は、「おっ母の耳に入れたいことがある」と言った。そして母親が寄って来るや否や、その耳に食いつき、噛み切ってしまった。

    親不孝者めと罵るのに対し、息子の言うには、
    「初めて書板を盗んで渡したあの時、もし打ちすえてくれていたら、捕まって死刑になるまでのことにはならなかっただろうに」

    初めに阻止しておかないと、ますます大きくなる――ということを、この話は説き明かしている。

    【引用元:岩波文庫『イソップ寓話集』著 イソップ/訳 中務哲朗】

    子どもを褒める意味を考える|イソップ寓話「盗みをする子と母親」より

    子供が友だちの書板をくすねたときや、着物を盗んで母親に持ち帰ったとき、なぜ母親はこの子を叱らなかったのでしょうか。

    それどころか、なぜ褒めたのでしょうか。

    もしかしたら、この親子は生活に困っていたのかもしれません。

    あるいは、母親が我が子を溺愛していたのかもしれません。

    この寓話からは、その点を詳しく読み解くことはできませんが、ひとつだけ分かることがあります。

    それは、この子が「母親に認められる・褒められるために悪さをするようになった」ということです。

    近年、「子どもを褒めて育てることが良い教育だ」という風潮があります。

    確かに、叱るよりも褒めたほうが、子どもは伸び伸びと育つでしょう。

    しかし、子どもが道徳的な過ちを犯したときには、厳しく叱ることも必要です。

    時に叱り、時に褒め、そしてまた褒める。

    そうして心と人間性を育てていくことが大切なのだと思います。

    そして、子どもを適切に叱り、褒めるためには、親が日頃から子どものことを気にかけていることが欠かせません。

    日常的に目を向けているからこそ、子どもの良い面にも、誤った面にも気づき、適切な関わりができるのではないでしょうか。

    褒めることも、叱ることも、それ自体が目的なのではなく、その子の人間性を育てるための手段でしかないのです。

    イソップ寓話「盗みをする子と母親」を読んで、私はこのようなことを感じました。

    今日の問いかけ

    「子どもを褒めるとき、あなたの目的は何ですか?」

    褒めることも、叱ることも、人間性を育てるための手段です。

    しかし最近は、「褒めること」そのものが目的化され、なぜ褒めているのかを子どもに伝えられていない場面が多いように感じます。

    その結果、「褒められるために行動する子ども」が増えているのではないでしょうか。

    それは裏を返せば、「褒められなければ動けない子ども」が増えている、ということでもあります。

    誰かを褒めるときには、なぜ褒めているのかを、言葉にしてしっかり伝えたいものですね。

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