抑圧期から解放期へ!心のバランスのとりかた

みなさん、こんにちは。

心理カウンセリング空の関口剛史です。

新型コロナウイルスは収束傾向になり、少しずつ普通の生活へ戻りはじめました。

今まで我慢してきた分だけ心は解放的になりますが、この解放期がカウンセリングにおいては1番危険な時期になります。

心に抑圧されていたエネルギーを一気に解放すると、自分を見失うことになるからです。

今日は「抑圧期から解放期へ!心のバランスのとりかた」について書いていきます。

目次
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否定期~解放期までの3段階

最初に、心理学者のV.E.フランクルがナチス強制収容所での体験を心理学の視点でまとめた『夜と霧』を参考にしながら、抑圧期から解放期までの3段階についてご紹介します。

人間は苦しい環境に置かれたとき、否定・抑圧・解放の段階を踏むと、フランクルは語っています。

強制収容所で自分や他の人々を観察してえたおびただしい資料、つまりそこでの体験のすべてをまず整理し、おおまかに分類すると、収容所生活への被収容者の心の反応は3段階に分けられる。
それは、施設に収容される段階、まさに収容生活そのものの段階、そして収容所から出所ないし、解放の段階だ。
~夜と霧より引用~

新型コロナウイルスにおいても同じような段階を踏むと思う。

第1段階 否定期

第1段階の特徴は、収容ショックとでも言おうか。だからこの心理学で言うところのショック作用は、状況によっては実際の収容の前にも起こりうる。
~中略~
精神医学では、いわゆる恩赦妄想という病像が知られている。死刑を宣告されたものが処刑の直前に、土壇場で自分は恩赦されるのだ、と空想をし始めるのだ。
それと同じで、私たちも希望にしがみつき、最後の瞬間まで事態はそんなに悪くないだろうと信じた。
~夜と霧より引用~

私たちはいきなりの苦難に遭遇したとき、その苦難を受け入れることができず、物事を楽観的に考えようとする。

新型コロナウイルスが中国で発生したとき「日本で感染拡大」するとは思われていなかった。次に横浜に停泊していたクルーズ船で感染拡大が起きたとき「船内での感染問題」として取り上げられ、日本国内での感染リスクまで議論が広がらなかった。中国から横浜へとリスクが近づいていたにもかかわらず。

人間は苦難に遭遇したとき「きっと私は大丈夫」と現実を否定するために楽観的に考えるクセがある。

しかし、現実を受け入れずに楽観的に考えていても苦しい現実は何も変わらない。否定していることが現実であると認めざるえないときに抑圧期へとシフトする。

第2段階 抑圧期

収容者はショックの第一段階から第二段階である。感情の消滅段階へと移行した。内面がじわじわと死んでいったのだ。
~中略~
第二段階の主な徴候である感情の消滅は精神にとって必要不可欠な自己保存メカニズムだった。現実はすっかり遮断された。
すべての努力、そしてそれに伴うすべての感情生活はたった1つの課題に集中した。つまり、ただひたすら生命を自らの生命をそして仲間の生命を維持することに。
~夜と霧より引用~

新型コロナウイルスが国内へ広がり、学校は休校、仕事はテレワーク、外出自粛が宣言されたことで、生活が一変し否定期から抑圧期へとシフトした。

抑圧期では生命の維持が優先される。マスクが高額で転売されたのもスーパーからトイレットペーパーがなくなったのも抑圧期のひとつの特徴。

今までとは違った生活様式となり変化に慣れるまでストレスがかかる。また今まで普通にできていたことができなくなり、目標を見失ったことでの喪失感も大きなストレスになる。

ストレスがピークに達すると自己防衛のために感情が消滅し、何かを考えたり、感じたりすることが億劫になり、何かをしようとは思えなくなるのが抑圧期の特徴。

第3段階 解放期

約3ヶ月間行動を抑制したことにより、コロナウイルスの収束が見えはじめ、抑圧されていた物事が解放へと向かう時期。

しかし、フランクルは解放期の危険性について下記のとおりに語っている

強制収容所から解放された収容者はもう精神的なケアを必要としないと考えたら誤りだ。
まず考慮すべきは次の点だ。長いところ、そら恐ろしいほど精神的な抑圧の下にあった人間、つまり強制収容所にいた人間は当然のことながら解放された後も、いやむしろまさに突然抑圧から解放されたために、ある種の精神的な危機に脅かされるのだ。
この危険とは、いわば精神的な潜水病に他ならない。精神的な圧迫から急に解放された人間も場合によっては精神の健康を損ねるのだ。
~夜と霧より引用~

まず、解放期は自分勝手になる人が増えてくる。その現象についてフランクルは以下のように語っている。

特に未成熟な人間が、この心理学的な段階で、相変わらず権力や暴力といった枠組みに囚われた心的態度を見せることがしばしば観察された。
そういう人々は今や解放されたものとして、今度は自分が力と自由を意のままにとことんためらいもなく行使していいのだと履き違えるのだ。
~夜と霧より引用~

「頑張って抑えてきた人」ほど自分勝手になりやすい。それは、心のなかの「抑圧の圧力」が高い状態で、我慢してきた分だけ「もう、私は我慢しなくていい」と勘違いをしてしまう。

抑圧が解放される解放期が、カウンセリングにおいても1番危険な時期。

悩みから解放されて自由になれるような感覚の時が1番無理をしやすく、その結果、心が破断する可能性があるから。

解放期が危険な理由

心のバランス

解放期が危険な理由は心が破断する可能性が高いからです。

自然界に周期があるように、心にもプラス周期とマイナス周期があります。

プラス周期の時は前向きでやる気がある状態で、マイナス周期のときはネガティブで悩みが多い時期となります。プラスとマイナスの周期の幅が心の振れ幅です。

心が安定しているときは、小さなプラス周期とマイナス周期を繰り返し、心の振れ幅も一定です。

しかし、悩みやストレスなどがたまり心が抑圧された状態が続くと、マイナス周期が長く続き、心に抑圧されたマイナス圧力が高まります。

苦しさあまり、たまったマイナス圧力を一気に解放すると、心は一気にプラス側に振れて、その時は前向きになり楽しく感じますが、一気にプラス側に振れたものは必ずマイナス側に振れ戻りが生じます。

心の解放の危険性

このとき、長い抑圧状態から抜けだしプラスを経験している分だけ、マイナスに振れ戻ることに「恐い・嫌だ」と感じてしまい、焦って無理にでもプラス側に戻そうとします。薬物などの快楽による手段で心をプラスに戻そうとすると依存になります。

また、急激なプラスとマイナスが繰り返されると、心の振れ幅が大きな振動となり、心が振動に耐えきれなくなると破断し自分を見失います。

解放期が危険なのは、マイナスとプラスの振動により心が破断し自分を見失うリスクが高いからです。

抑圧期から解放期へのバランスのとりかた

心のバランスの取り方

抑圧期から解放期は、今まで我慢してきた分だけ一気に解放へ向かおうとします。しかし、一気に解放すると解放した分だけのより戻しが生じます。

新型コロナウイルスで例えるならば、今までどおりの生活に一気に戻そうとすると感染者が再度増えて、再び外出自粛の状態に陥る可能性があります。

そうならないためにも、抑圧期から解放期への移行は少しずつバランスを取りながら進めることが重要になります。

抑圧期から解放期へのバランスのとりかたとして、今回は以下3点をご紹介します。

1.作用と反作用の仕組みを理解すること。

自然界は「作用と反作用」や「圧縮と解放」で成り立っています。一定方向へ強いエネルギー(作用)が生じると、必ずその反対側へもエネルギー(反作用)が生じます。

急激にダイエットした後にリバウンドするように、抑圧された心も急激に解放すると必ず急激な落ち込みが生じます。

この仕組みを理解しておくことで「急激な解放」が危険であると判断することができると同時に「回復した後の落ち込み」を受け入れやすくなります。

2.抑圧エネルギーを少しずつ解放すること。

苦しさあまり、抑圧されたエネルギーは一気に解放したくなります。

そのときに快楽で一気に解放をすると、その後の落ち込み(より戻し)も大きくなり快楽を常に求める依存状態へと陥ります。

抑圧されたエネルギーは、少しずつ解放していくことです。そうすることでマイナス側のより戻しも小さくなり、エネルギーをコントロールしやすくなるからです。

3.日常の中から楽しみや感謝を見つけること。

これから少しずつ社会が日常を取り戻していくなかで、その日常の中から楽しみや感謝できることを見つけていくことです。

普通に学校に行けること、友人とおしゃべりができること、家族で買い物にいけることなど、今まではあたりまえすぎて気づけなかったことに、非常事態になったからこそ「豊かであること」に気づけると思います。

快楽や刺激による楽しみではなく、日常の生活の中から心からの楽しみを見つけていくことで心は広がり、その分だけ、心の中で抑圧されたエネルギーは自然と解消されゆとりがうまれます。

心にゆとりがうまれることで体と心の免疫力は高まります。そうすることで新型コロナウイルスの第2波を抑制することができるのではないでしょうか。

まとめ

新型コロナウイルスという長いトンネルのなかで、ようやく出口の光が見えてきました。しかし、そのときに急いでトンネルの外に出ると、外の光に目が慣れておらず、すべてを見失ったかのような状態になります。

抑圧期から解放期への移行は、長いトンネルから抜け出すようなものです。焦らず少しずつバランスを保ちながら光に向かって歩んでいくことで、目は自然と順応します。

今後、第2波・第3波を繰り返しながらウイルスが収束していくことになると思います。だからこそ、第1波を抜けようとしている今の時期は抑圧期から解放期へのバランスをとることが重要になると思います。

そして、普通の生活こそが「豊かであること」に気づき、お互いがお互いを感謝しあえるようになることも、ひとつの新しい生活様式になるのではないでしょうか。

ここまでお読みいただきありがとうございました。

フランクルの本をブログでまとめています

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